夫から逃れ、山あいの別荘に隠れ住む「わたし」が出会った二人。
チェンバロ作りの男とその女弟子。深い森に『やさしい訴え』のひそやかな音色が流れる。挫折したピアニスト、酷いかたちで恋人を奪われた女、不実な夫に苦しむ人妻、三者の不思議な関係が織りなす、かぎりなくやさしく、ときに残酷な愛の物語。
著者略歴
小川 洋子
1962年、岡山県生れ。早稲田大学文学部文芸科卒業。
88年「揚羽蝶が壊れる時」で第7回海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」で第104回芥川賞を受賞。
2004年『博士の愛した数式』が第55回読売文学賞、第1回本屋大賞を受賞。